Interview vol8 折井あゆみ×DisGOONie ロングインタビュー

「最初の助走をもらった」

――― 「DisGOONie」の第4弾公演!
まず始めに今のお気持ちを率直にお聞かせ願えますか?

折井  今回、「初乗船」です!
私、西田さんとご一緒させていただくのは、今回で5回目になるんですけど、西田さん始め「アンドレ(AND ENDLESS)」のメンバーの皆さんには本当に「恩」を感じているんです。
出会いの1番最初は、2008年の『となりの守護神(ガーディアン)』※1で、AKB48っていうアイドルグループにいた私が、そこを卒業してから1本目の舞台だったんですよ。でも、人生にとっては2本目の舞台で。その「人生1本目」は、高校生の時にオーディションを受けて出演した舞台なんですけど、それが自分の中であまりにもひどくて・・。それまで「舞台」っていうものを観た経験がないのに、「舞台」に上がっちゃったんですよ。だから、それこそ、「上手(かみて)、下手(しもて)」※2っていう言葉が分からない。どれくらいの音量で喋っていいかも分からない。博品館(劇場)だったんですけど、演出家の人に「それじゃあ、後ろの席まで聞こえないよ」って言われても、「え?どのくらいのボリュームで・・???」ってなっちゃって・・。結構、苦々しい思い出っていうか、自分の至らない所を見せつけられたって感じだったんです。

そんな時に、ご縁があって、『となりの守護神(ガーディアン)』でアンドレの皆さんと、西田さんと出会って。「舞台」に対しての苦手意識もあったから、「大丈夫かな?」ってちょっと不安な気持ちもあったんですけど、稽古の顔合わせの時に皆さんがすごく優しく声をかけてくれて、「あ、これは私、大丈夫かもしれない!」って思ったんですよね(笑)。

――― 「顔合わせの時」ということは、「初対面の時点」で、そう思われたんでしょうか?

折井  はい!もう、とにかく優しかったんですよ!グループを卒業してソロで仕事をしていく中で、単発の仕事はたくさんあったんですけど、「座組」というものに自分が混ざって、ある一定の期間を共にするいうのも初めてだったんですね。なので、不安もあったんですけど、そこを皆さんがすごく温かく迎え入れてくれたんです。それからは稽古場にもウキウキ通えて(笑)。なんか本当に学校生活をやり直しているような、部活に行っているような気持ちっていうか、・・何て言うんだろ?・・みんなで何かを一緒にやるって、「あ、すごく面白いし、お芝居楽しいな」って。こんなにウキウキした気持ちで自分が稽古場に足を運ぶと思ってなかったんですよね。だから、アイドルを卒業して、この先お芝居やっていこうと思っていた自分の中での、「最初の助走をもらった」って。そう思えたんですよ。
分からないけど、これがもし、違う現場だったら、「舞台またやろうかな」って思ってなかったかもしれないし・・、本当にアンドレの皆さんに最初に出会ったからだなって。

――― それ以来、折井さんは西田さんの作品には数多くご主演されていらっしゃいます。初めての出会いから約9年、西田さんの印象について、もしくはご自身の心境についての変化などはございますか?

折井  その都度、その都度の思い出はホントにいっぱいあります。(笑)
ご一緒した2つ目が、『Cornelia』※3。私は、「セレン」という役を演らせてもらったんですが、あの作品で初めて「役」について「悩んだ」んです。アンドレの皆さんとご一緒した『となりの守護神(ガーディアン)』以降、何本か舞台をやったんですけど、それは「楽しい」で出来たんですよ。どの現場も、「楽しい」で乗り越えられちゃった。それが初めて、「この役ってどういう風に演じたら良いのかな?」って。それまでは、何て言うか「パッと明るい」みたいな役が多かったんですけど(笑)、初めて「人の生死」に関わるような役だったので、「今までと同じじゃダメだな」って真剣に悩みました。でも、その時もやっぱり、「辛い」とは思わなかったんですよね。私はアンドレのお芝居が大好きで、自分が出演していない時も観に行っていたし、とにかくその中に入って、「なんかやってやろう」っていう気持ちになりました。一人の役者として「この作品に色をつけたい」って初めて思えた作品です。

それからしばらく空いて、『一騎当千』※4かな?その空いた間にも、会うと「いつか一緒にまたやろうね!」って言ってくれて。私はそれをずっと信じてたから、「よし。次にご一緒する時はもっとスゴイのかますぞ!」みたいな心の準備はずっとしてたんです(笑)。
『一騎当千』は、西田さんのオリジナル作品ではなく「原作もの」の舞台だったんですけど、「呂布」という、強く、クライマックスでも大事なシーンを担う役だったんですよね。なので、「ここに私を入れたくれたんだ」と思って、「おや?これは、ちょっと、信用されたかもしれない」って思えて、本当に嬉しかったんですよ!なんか「覚悟」をもらった、そんな気がしました。これもまた私の「転機」になった作品ですね。

で、次に『まほろばかなた』※5。この作品には、「歌い手」の方々が多く出演されてたんです。私はアイドル時代、グループの中で歌は歌っていたけれども、周りはみんなソロの方たちだったりとか、バンドのボーカルの方たちとか、本当に「歌で生きてきた」人たちだったから、この現場で私に求められているのは多分、「歌」じゃないなと思って。西田さんの「もの創り」にかける想いとかも、全部本当に分かっているわけじゃないけれど、(他の出演者の)人よりちょっと経験がある私は、「ここでは「芝居」で勝負しなきゃいけないんだな」って思ったんですよね。『まほろばかなた』は1幕も2幕も私のシーンから始まったんですけど、それは、「幕開けを任せたぞ」って言われてる気がして、それもすごく嬉しかったんです。
後、この作品は西田さんの新作書き下ろしで、私は吉田松陰の妹の「ふみ」という役だったんですが、この「ふみ」が、すごく「私っぽかった」んですよね。おせっかいで、友達やお兄さんの世話を焼いたりとか、しっかり者なんだけど、でもちょっと涙もろい所があったり。「もしかしたら西田さんて、私のことこういう風に見てたのかな?」って。そして、1幕ラストでは、吉田松陰が亡くなる前に妹に向けて言う、「凛と生きろ」って台詞を書いてくださったんですけど、その時「これは、西田さんから私に向けた言葉だな」って思ったんです。アイドルを卒業して、右も左も分からずやっていた「出会った時の私」から、「2014年までの私」を見てきた西田さんが、きっとその時の私にくれた言葉だなって。自分の台詞じゃないんですけど、「忘れられない台詞をもらったな」と思いましたね。

「親戚のお兄ちゃん」

――― 1つ1つに本当にたくさんの思い出があるんですね!そして今回ついに「DisGOONie」に「乗船」していただくことになりました。

折井  一昨年、「「DisGOONie」が始まります」っていうのを聞いて、「そうなんだ!これは乗りたいぞ!」と。「初めての航海」には「乗船」出来なかったんですが、私は、乗れるチャンスをきっといただけけると信じて、ずっと波止場でリュック背負って待ってたぐらいの気持ちです(笑)。
これまでにも毎回、毎回、ご一緒する度に「扉」を開けてきてもらったので、今回は私が他の現場で得たもので、「新しい風」をこの「船」に吹かせたいなって思っています。
なので、結構「想い」は深いです。この公演に対して、そして西田さん、アンドレの皆さんに対しての「想い」が深いですね。
さっきも言った通り、一緒にやってない期間でも、会う度いつも「いつか一緒にまたやろう」って言ってくれてて。皆さん本当に心優しいから(笑)。私の中で皆さんって、「久しぶりに会う親戚たち」みたいなイメージがすごく強いんですよ。出会った当時、私もまだ若かったし、・・皆さんも10歳くらい若かったから(笑)。なんか「気の良いお兄さんたち」みたいな感じで、別に普段すごい連絡取っているわけじゃなかったのに、舞台観に行ったら、いつも「ウェルカム」で迎えてくれて。「折井ちゃん、来たね」みたいな。「今回どうだった?」、「折井ちゃんなら何やりたいの?」、「次また絶対一緒にやろうね」って。本当に私は西田さんたちのこと「親戚のお兄ちゃん」くらいに思ってます(笑)。

――― 今回の「DisGOONie」にも「AND ENDLESS」のメンバーが「乗船」されています。折井さんから見「AND ENDLESS」のメンバーについて印象などお聞かせいただけますか?

折井  これも色々ありますよ(笑)まず、佐久間さんから話そかな(笑)。佐久間さんは、私の中で「突破口を作ってくれた」っていう思い出がすごくあります。飲み会とかでも、色んな話をしましたし、仕事の枠を超えて、信頼関係って出来ていくんだなって。本当に優しいんですよ、飾らないし。なので、「あ、この人に、心開いていいんだ」って。舞台観ていても、佐久間さんが出てくると、私はつい体が前に行っちゃいます(笑)。

良子さんは、やっぱりね、アンドレをずっと引っ張ってきている女優さんだし、ただ立っていることで創り出す、自然と出てくる「空気感」みたいなのをすごい感じるんですよね。「覚悟」が目に見えてわかる女優さんだなと思ってます。この人の前で「下手なことをやったら、通用しないな」って、それはすごく感じていて。なので、今回は良子さんに驚いてもらいたいですね!「最初の私」を知ってもらってるから、「折井ちゃん、面白く育ってきたね」って言ってもらいたいです!
洋二郎さんは、芝居の熱量みたいなものが凄く伝わってくる人ですね。良子さんは私の中のイメージでは「青い炎」なんですよ。「赤」じゃない。「メラメラ」じゃない。何だろ?・・熱いんだけど、あんまりそれを表に出さないっていうか・・こう・・「青い炎」なんですよね(笑)。それと比べると、洋二郎さんはどっちかっていうと「赤」なのかなって思います。もう、「表」から熱量が伝わってくる人!
窪寺さんは、『Cornelia』の時、すっごいがっつり絡んだんですよ。で、凄く一緒に悩んでくれたんですよね。それがすごく思い出深いです。悩みとかとも一緒に向き合って、一緒に旅をしていくような役の間柄だったんですけど、私より先輩の方が、すごく悩んでやってらっしゃる姿を見た時に、「私の悩み、ちょっと足りないのかな?」とか思って(笑)。普通は、苦悩とか、あんまり表に出さずにスマートにやりたいと思うんですよね。だけど先輩がそういう風に、悩んでくれる姿を見せてくれたことが本当にすごく嬉しかったんです。
それから、フミくん(平野雅史さん)!フミくんも大好き(笑)。フミくんはね、癒し系ですよ。アンドレの癒し系。えらいと思う。サボらない子だろうな、って思っています。どの現場で会ってもずっと笑顔だし。ニコニコしながら情熱を燃やしている。
西田さんは、「本当に頭上がんないな」って思うんですよ。振り返ってみて、私のすごく意地っ張りな所だとか、プライドが高い所だとかをちゃんと分かってるんですよね。「女優」である前に、「人」としての私を、ちゃんと分析してくれてるんですよね。「さすが演出家」だと思うんですけど(笑)。
1年に1回とか2回とか、本当にたまにしか会わない時とかにも、なんかもう、絶妙な言葉をくれたりとかするんですよ。私が「今、辛いことがあります。」なんて言ってもないのに、「大変だったね」みたいな(笑)。「何で、そんなこと分かったんだろう?」って。ご一緒した、どの現場でも、西田さんからもらった言葉が、「私の支え」になることが沢山あったし、ホント「不思議な人だな」って思います。なんか「人たらし」と言われる所以はそこにあるのかな?(笑)
「私を育ててくれた人」ですから、「もらった分だけを返す」よりも更にね、「お土産つけて返したいな」っていう気持ちではいるんですけどね。
いや、でもホント「私の親戚の兄ちゃんたち」すごいなって思ってます(笑)。

――― 今回の「DisGOONie」もまた、折井さんにとって「忘れられない公演」になることを期待しております!それでは今公演に対する意気込みをお聞かせください。

折井  私は、「ジャンヌ・ダルク」が主人公の『GOOD-BYE JOURNEY』に出演させていただきます。「ジャンヌ・ダルク」っていう人のことは、皆さんよく知ってる物語じゃないですか?歴史の上でも、最終的にはどうなるかっていうことを、観に来るお客さんのほとんどはもう分かってる。でもこの『GOOD-BYE JOURNEY』は、きっとそれだけじゃないのも、私にはもう分かってますので。西田さんは、そうしない(笑)。結末は変わらないとしても、そこに至るまでの物語の中で、きっと「悲劇」だけじゃない。同じ女性から見て「本当に壮絶な人生」だったと思うんですよ、「ジャンヌ・ダルク」のことを。西田さんが創る、その「ジャンヌ・ダルク」の作品に関われることがとても嬉しいです。今公演の3本の中で、ある意味1番分かりやすいストレートな作品だからこそ、作品の持つインパクトに負けない、内容の深いものを創りたいな、って思ってますね。

「探します!困るから!」

――― ありがとうございます。それでは最後の質問になるんですが・・。今回の企画のインタビューで、皆さんにお伺いした質問です。
もし、この「DisGOONie」の「船」を任されたとしたら。「DisGOONieの船長」になった時に、折井さんだったら何をしますか?または何をしたいですか?

折井  「絶対、嫌だ!」って言います(笑)。とりあえず「絶対、嫌だ!」って。どうしてもって言われても「絶対、嫌だ!」って言います。海に飛び込んじゃうかも知れない!「やらないよ」って言って。で、そろそろ何かが治まったかなって頃にひょっこり帰ってくる、「結局どうなったの?」って言って(笑)。私、結構集団行動得意だし、皆さんのこと大好きだし、アイドル時代にそういうポジションやってたこともあるけど、女の子のことは分かっても、男の人のことはよく分からないし、(西田さんの周りにいる)こんなに個性強い人たちに囲まれて、「船長」としていなきゃいけないのなんて、「絶対、嫌です!」(笑)。私は「個性の強い人たちがいるなぁ」って言いながら、ヘラヘラしているくらいがちょうどいい(笑)。

――― 申し訳ございませんが皆さんにご回答いただいておりますので、「嫌だ」以外で、何卒宜しくお願い致します(笑)。それでも任されたら、折井さんはどうされますか?

折井  それでも任されたら?・・うーん、とりあえず帽子だけ被りますね。帽子だけ被って、死ぬ気で西田さんを探します。 困るから。「残されたこの大人たち、大変だから」って(笑)。それから、もっとでっかい旗は作ります。西田さんが、どこからでも見つけられるように。・・それくらい(笑)!
後、何するかなぁ・・?毎日、西田さんの文句言う!すごく悲しみもするんだけど・・「なんでどっか行ったんだ!」って文句も言う。「親戚のお兄ちゃん」だから(笑)。
やっぱり「DisGOONie」っていうのは、「西田さんが「船長」で、そこに集まってきた変わり者たち」っていうイメージなんですよね。勿論「ソウル」は受け継ぎたいですけどね・・、でも私には荷が重いです(笑)!だから私は、とりあえず帽子被って、でっかい旗。「旗を変える」っていうのも、ちょっと違うと思うんですよね。だから西田さんが本当にどっかいなくなっちゃったら、「船」を見つけられるように旗をでかくして。もう、「宝探し」どころじゃないですよ、「西田探し」ですよ(笑)!で、西田さんが帰ってきたら、ボコボコにします!「どこ行ってたんだよー!」って言って(笑)。

  1. 舞台『となりの守護神』。2008年2月上演。
  2. 演劇・舞台用語。上手(カミテ)は、客席からステージに向かって右側、下手(シモテ)は、客席からステージに向かって左側を示す。
  3. AND ENDLESS winter edition2008『CLASSICS Ⅱ』。『新説・鬼娥島』、『Cornelia』の2本立てで2008年12月上演。
  4. 舞台『一騎当千』。2012年11月上演。
  5. 舞台『まほろばかなた -長州志士の目指した場所-』2014年4月上演。

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