――― 「DisGOONie」の第4弾公演!いよいよ詳細が公開となりました。
まず始めに「DisGOONie」の印象について率直にお聞かせ願えますか?
萩野 僕が、一番素敵だなって思っているのは、大輔さんが『グーニーズ』※1がお好きで、それをもじって「DisGOONie」って名前にされてる所ですね。「グーニーズ」っていうのは「まぬけな」って意味で、その子供心というか、冒険心というか、そういう所がとても好きなんです。
冒険ていうのは、ホント勇気がないと出来ないんですよ。でも勇気って、どんどん失われる、大人になればなるほど。忘れてしまうし、そうじゃない所で生きていくんです。でも、大輔さんは違う。
――― 萩野さんは、これまでに西田さんの作品にいくつか出演されいますが、「DisGOONie」の公演には初めての参加になりますね。
萩野 はい。大輔さんが勇気を掲げた「DisGOONie」の四つ目の航海に、ようやく乗船させていただく。この「まぬけな海賊船」に乗れるっていうことは・・ホントにもう、それだけで幸せなんですよね、僕にとっては。
『RUSTRAIN FISH』※2とか『Re-INCARNATION』※3とか、大輔さんのオリジナルでやらせていただいた作品があるんですけど、あれから1年半経ってるので、「ようやく」やらせていただけるっていう気持ちです。(笑)
――― 萩野さんご自身だけでなく、西田さんも、お客様も同じ気持ちだと思います。
萩野 以前、大輔さんに「盟友」って言っていただいたんですけども、僕にもそういう感覚があるんです。だから、大輔さんの一つの側面を背負って、ただ「あー楽しかった」っていうだけの作品じゃないものを・・「面白いし、ビックリもするよ」っていう作品を、たくさんのお客さんと一緒に共有できればいいなぁ、っていう思いで参加させていただきます。
――― 今公演で萩野さんが出演される「作品」、「役」についてお聞きしたいのですが?
萩野 今回3作品を同時に上演される内の1本『SECOND CHILDREN』に出演させていただきます。僕がやらせていただくのは、平賀源内。
この作品は、その平賀源内と杉田玄白を中心に展開される物語だというのは聞いています。
平賀源内というのは、「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」。「天才」、「奇才」って呼ばれた人なんですけど、それだけではなく「稀代のペテン師」みたいにも言われてる人らしいですね。そういう人って・・何ていうんですか、あの、非常に奥深いじゃないですか、魅力的というか(笑)。
歴史上の偉人って、結構褒められる人ばっかりなんですけど、「素晴らしい人」が多い中で、「稀代のペテン師か?」って。(笑)でも、「そう言われることの真意は何か?」っていうのは、僕も考える余地がまだあるので、台本以外の所で、平賀源内という男を探ってみたいなぁって思ってます。そこに杉田玄白っていう『解体新書』を書かれたもう1人の天才が絡んでくる。そういう史実を、大輔さんがどう料理されるのかっていうのが楽しみです。歴史の事実の面白さだけじゃない所、それが西田さんの演出であり、脚本だと思うんですよ。
――― 萩野さんと西田さんはお互いに信頼し合い、惹かれ合っている印象があるんですけれども・・それはお互いのの「悲しみの質」が似てるからなのか、喜びの質が似てるからなのか?それともそれが違うからなのか・・、萩野さんが西田さんに惹かれる理由をお伺いしてみたいのですが・・。
萩野 大輔さんに惹かれる理由ですか・・・、多分、根本的には「悲しみ」なんだと思いますね。でも、「悲しみ」なんだけど、その上で、「それを、どうにかして笑いに変えようよ」っていう事なんだと思います。
しょうがないじゃないですか、「悲しい」っていうことは事実いっぱいあって、・・出会いがあったら別れがあるように。でも「その時にすげえ泣いても、次には笑ってたいな」って。で、そういう力をお互いに・・・、僕が大輔さんに、見えない所で与えられることができたんだとしたら幸せだなって思うし、実際僕は大輔さんにもらってます。何故ならば、今日こうやってインタビューを受けさせていただくことすら、僕にとっての「前に向かって行こう」っていう、きっかけを作ってくれたなって思うんですよね。僕の人生を考えれば。だからそういった意味で、「悲しみ」は共通してると思うんです。
――― 互いに、実際に「悲しい」ってことを、言葉にして話し合ったりはしないんでしょうか?
萩野 全くないですね。(笑)一切「悲しいですね」って話はしたことないです。でも、話し合わずとも、それを踏まえて「楽しくいきましょうよ!」「笑いにしましょうよ!」って。「僕がそれを上手いこと料理します!」みたいな演出を、それはもう見事にされるんです(笑)
――― 今回の作品では、演出家、作家としてだけではなく、俳優としての西田さんとも、「親友」という間柄で対峙していくことになるわけですが、「俳優・西田大輔」について、萩野さんの言葉で語っていただけるとしたら?
萩野 そうですねぇ・・、まずあの「理想的な存在感」と、「覚悟」ですね。
「覚悟」と言うのは、例え下手を打ったとしても、「全部自分の責任にする」っていう所です。僕は昨年、『ESORA』※4っていう、大輔さんが俳優としてのみ参加されていた作品を観たんですけど、やっぱりあの作品でも、・・こう「それまでの世界観を切り裂いていく」と言うか・・勿論そういう役なんですけど、「言われたからやってる」とかじゃくて、「望まれてるからやってる」とかじゃなくて、そこには「俺だったらこうするよ」、っていう提示がちゃんとあるんです。だから、全部背負ってるんですよね、それをやる時点で。
やっぱり、「お客さん楽しませよう」とか、「この現場の何かを、空気を動かそう」っていう…僕、それが一番大切だと思うんです、俳優として。だって舞台上に色濃い人が出てきて、ガラッと空気が変わったら楽しいじゃないですか、飽きないじゃないですか。そういう人が出てくるからこそ、作品が光るわけで、・・作品だけが光ったら寂しいじゃないですか、俳優として。
――― その役を演じる俳優は「誰でもいい」とは、ならないように、ということですか?
萩野 それぞれの俳優の色があって、「自分だったらこうする」っていう。そして背負うわけじゃないですか。勿論、共演者との助け合いがある中で。でも前に出なきゃいけない時に出ないと、俳優としていかんとは思うんです。(笑)
僕は、大輔さんを「あ!俺のお友達がいる!」と思ったんです。全部持ってくんですよ。背負うんですよ。そういう点で、「あ!お友達がいた!」と思って、嬉しくて、もう。(笑)
最近、僕がある人に言われた言葉があるんですけど・・・「時間は有限だ」と。
この言葉は、非常に深いなって思っていて、僕の有限な時間の中、この作品に出させてもらえて、そしてそれを全力でやる。で、ご来場いただくお客さんも、その方の人生にとって有限な時間を切り取ってご来場下さるわけじゃないですか。その時に、圧倒的な何かを観せるっていうのは、使命だと思っていますし、同時にそれが楽しみであると思ってるんです。
――― ここで逆に、萩野さんが、DisGOONieに出演する時に「求められているモノ」とは何か?ご自身ではどのように思われていますか?
萩野 …すごいおこがましいことですけど「文化の継承」ですよ、それしかないです。(笑)大輔さんの作品が、50年、100年残るのは間違いないんですけど、それを知らない人たちが、今はDVDとかもあるんで、それを観た時に、「こいつらすごいことやってるよね」って思う作品をちゃんと残してあげることだし、共演者の人たちにもそれは伝えないといけないな、っていうことだけです。僕は舞台人生15年あるんですけど、その15年ある中で、4年くらいなんですよ。大輔さんと出会って。それからは圧倒的に変わったんですよ、僕は。僕の舞台人生において、大輔さんと出会えたのは、非常にデカイことなんです。なので、大輔さんの作品に出る時には、絶対「後ろ向きな所」を見せちゃいけないっていうのがあります。これは絶対に。
――― 「俳優・萩野崇」という人間について、勿論答えにくいとは思いますが、あえて答えていただけるとしたら、自分をどんな人間だと思いますか?
萩野 ・・そうですねぇ、まあ、クズではあります。(笑)
クズではありますけども、でも自分をクズだって認めた時に、それでも「何が一番大切なのか」っていうのは、一生懸命考えてはいました。その時に大切だなって思ったのは、俳優・萩野崇がそこにいることで、周りの人たち・・共演する人たちや、スタッフさん、皆が「オモロイね」って、ちょっと熱くなる、温度が一つ高くなるような…そんな俳優でいたい、と。僕がいるかいないかで、一つ上がるっていうことだけはやらなきゃいけないな、って思ってるんです。
――― 皆、萩野さんを信頼されています。出会った人を惹きつけるその原動力とは?
萩野 うーん。(笑)時々考ことがあるんですけど・・・俺こんなもんじゃねえよな、って。これが割りと近いのかな・・それはプライドだったり、誇りだったりするんですけどね。
――― それでは最後の質問になるんですが・・。もし、この「DisGOONie」の「船」を任されたとしたら。「DisGOONieの船長」になった時に、萩野さんだったら何をしますか?または何をしたいですか?
萩野 「沈没上等!」って言うのもいいんですけど、(笑)・・・「みんなで笑ってたい」ですね。笑ってたいです。みんなで。
船に乗った人間も、どっかに寄った所で出会った人間たちも、観客の皆さんも、みんな。
「楽しいね」、「あんたたちと出会えたこと楽しいね」って言って、「じゃあゴメンね、また船行くから」、そういう旅を僕らが続けていければ。その旅の途中は苦しいだろうけど(笑)。それでも、みんなで笑ってたいですね。
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